【常野 響介】
かなわないな、君には。
僕も、君みたいに考えられたら、どれだけいいだろう。
【琴吹 瑞香】
……なんだか、ちょっと馬鹿にしてます?
【常野 響介】
まさか。素直に憧れるよ。
【琴吹 瑞香】
わたし、当たり前のことを言っただけですよ?
【常野 響介】
当たり前か……。
そうだね、当たり前なのかもしれない。
大事だと思うのが、きっと普通なんだろうね。
【琴吹 瑞香】
……響介先輩は、そうじゃないんですか?
【常野 響介】
さあね、大事かどうかは分からない。
戻りたいとも思っていないんだ。
【常野 響介】
あの人達が心安らかでいるなら、それでいい。
そこに僕がいなくても。
【琴吹 瑞香】
先輩がいないから、寂しがってるかもしれないですよ?
【常野 響介】
あはは、どうだろうね……。
もしそうだったとしても、僕はあの街には帰れないよ。
【琴吹 瑞香】
先輩……。
【常野 響介】
全部、過去のことだから。
もういいんだ。
そう決めたから。
でも……ありがとう。
――それきり、先輩は、黙ってしまった。